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大学教員・研究員の心を鷲掴みにするうまいビジネス [日常]

先月、ある出版社から学術論文誌のEditorial Board Memberをやってくれないか、というメールをもらいました。研究者にとって学術誌の編集をやることは大変名誉なことで普通は喜んでやることですが、何か引っかかりました。何故か写真を送ってこい、という。彼らのウェブサイトの作りもちゃちい。1度目は無視しましたが、2度目のメールで他の編集委員を確認した所、信頼出来るアメリカ人の友人の名前を見つけたので、それならいいかと確認せずにCVを送ってしまいました。するとあっけなくようこそ、と。

そして数日すると今度は記念すべき初刊にレビュー論文を書いて欲しい、で締め切りは1ヶ月後で宜しく、と。一応検討すると彼らのサイトを見ても論文を書く上でのガイドラインがない。締切までの期間も短い。怪しさが倍増しました。さらにガイドラインを送ってもらったら他社からの流用品(察するに消し忘れた)で、その他社の名前は怪しい出版社リスト(BEALL'S LIST)に入っていました。実際2016年の11月にinaugural issueが出るはずでしたが、2017年6月に彼らのウェブサイトを見ても何も発刊されていない状態でした。

Flaky Academic Journals

またopen access journalというのは論文が受理されても著者がお金を払って掲載してもらうもので、書く負担だけでなく金銭的な負担を伴います。高いお金を払って購読する必要がないため誰もが論文を閲覧出来る一方で、モラルがない出版社だと査読もまともにせずとにかく数を出すことで利益を得ることが出来ます。

今回新しい英単語を覚えました。"predatory"という単語で怪しい出版社や学術誌を形容する時に使うようです。ある意味お金払ってもウェブ上に論文が掲載されれば詐欺には当たらないし、新しい出版社が新しい学術誌を立ち上げる時には過去の論文の掲載がないのも当たり前です。ただ自分の時間を使うのに値するか、時間をかけて論文をそこに載せるかは別問題で、自分のキャリアにも大きく影響しかねません。そこで以下のサイトを参考に最終判断をすることにしました。

Beyond Beall’s List: Better understanding predatory publishers
Predatory Publishing

後者はフィラデルフィアにあるトマス・ジェファーソン大学の図書館のサイトですが、1-7のチェック項目のうち、少なくとも2-7でひっかかりました。特に6は割引を提示されましたが、具体的な金額のそれはありませんでした。またISSNの予定も曖昧で、Open Access Scholarly Publishers Associationに登録もありませんでした。この時代さほど重要とは思いませんが、会社の住所と電話番号を調べたところ住所はシリコンバレーのバーチャルオフィス、電話は携帯電話の番号でした。またカルフォルニア州の会社登記も調べましたが、検索してもその会社は出てこず法人登記もしていないようでした。

California Secretary of State

以上の情報から私はこの学会誌に投稿すること、仕事することを辞退することにしました。

恐らく違法ではないし、彼らのビジネスを邪魔するつもりもありません。正直に言うとビジネスモデルとしてテニュアを渇望する大学教員・研究員の心理を巧みに利用した賢いやり方だなぁと、正直感心しました。自分は現場にいながらこんなこと思いつきもせず、ビジネスセンスのなさを再確認しました。営業やめて正確です(笑)。

なお念のため、この記事、そして私の決定はオープンアクセスの仕組みや取り組みを否定するものではありません。またこの学術誌へ参画を決めた先生方を批難するものでもありませんので、悪しからず。

P.S. 参考:More invitations from fake academic operations
なぜ研究者は「ハゲタカジャーナル」で論文を出版してしまうのか
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